NBAのバイアウトについて
仕組みとメリットやデメリットを解説NBA
今回は、NBAのバイアウトについて徹底解説します。バイアウトとは、チームと選手が契約を解消する際に、選手が残りの契約金の一部を放棄することで合意することです。バイアウトにはメリットやデメリットがありますが、それらはどのようなものでしょうか?この記事では、以下の見出しで詳しく説明します。
公開日:2023-05-17
バイアウトとは何か?
バイアウトの定義と仕組み
バイアウトとは、NBAでチームと選手が契約を解消する際に、選手が残りの契約金の一部を放棄することで合意することです。例えば、ある選手が2年間で2000万ドル(約22億円)の契約を結んでいたとします。しかし、チームはその選手を必要としなくなり、他のチームにトレードすることもできない場合があります。この場合、チームは選手に対して、残りの契約金の一部(例えば1000万ドル)を支払う代わりに、契約を解消することを提案します。選手がこれに同意すれば、バイアウトが成立します。選手はフリーエージェント(FA)になり、他のチームと契約することができます。チームはサラリーキャップ(年俸総額制限)やロースター(登録選手枠)に余裕を持つことができます。
バイアウトの歴史と背景
バイアウトはNBAでは比較的新しい現象です。1999年にNBAがロックアウト(労使交渉決裂)に陥った際に、新たな集団交渉協定(CBA)が結ばれました。このCBAでは、サラリーキャップやラグジュアリータックス(高額年俸チームへの課税)など、チームの経営を規制する仕組みが導入されました。これにより、チームは年俸総額や税金を抑えるために、契約期間や金額を慎重に考える必要が出てきました。しかし、時には予想外の事態や失敗が起こります。例えば、選手が怪我や不振に陥ったり、チームの方針や戦術が変わったりすることがあります。このような場合、チームはその選手を放出したいと思うかもしれませんが、他のチームから引き取ってもらうことは難しいかもしれません。そこで、バイアウトという方法が考えられるようになりました。バイアウトは2000年代初頭から徐々に増えてきましたが、特に2011年以降に急増しました。これは2011年に新たなCBAが結ばれた際に、サラリーキャップやラグジュアリータックスがさらに厳しくなったからです。
バイアウトのメリット
選手にとってのメリット
バイアウトには選手にとってもメリットがあります。まず、選手は自分の希望するチームや役割を選ぶことができます。例えば、優勝候補チームや自分の得意なポジションやスタイルに合ったチームを探すことができます。また、選手は残りの契約金よりも少ない金額を受け取る代わりに、新たな契約金を得ることもできます。例えば、ある選手が残り2年間で4000万ドル(約44億円)の契約をしていたとします。その選手が2000万ドル(約22億円)を放棄してバイアウトされた場合、その後別のチームから2年間で3000万ドル(約33億円)の契約を受けることも可能です。この場合、選手は合計で5000万ドル(約55億円)を得ることになります。
チームにとってのメリット
バイアウトにはチームにとってもメリットがあります。まず、チームはサラリーキャップやロースターに余裕を持つことができます。例えば、あるチームがサラリーキャップやラグジュアリータックスの上限ギリギリまで年俸総額を押し上げていた場合、そのチームは他の選手を獲得したり交渉したりすることが難しくなります。しかし、そのチームが高額年俸選手をバイアウトすることで、その分だけサラリーキャップや税金を節約することができます。また、そのチームはロースターから不要な選手を除外することで、若手選手や新加入選手などほかの選手への出場機会や発展機会を増やすこともできます。
バイアウトのデメリット
選手にとってのデメリット
バイアウトには選手にとってもデメリットがあります。まず、選手は残りの契約金よりも少ない金額しか受け取れません。例えば、ある選手が残り2年間で4000万ドル(約44億円)の契約をしていた場合でも、そのうち2000万ドル(か)を放棄してバイアウトされた場合、その選手は2000万ドル(約22億円)しか受け取れません。また、選手は新たなチームと契約する際に、低い年俸や短い契約期間を受け入れることが多くなります。例えば、ある選手がバイアウトされた後に別のチームからベテラン最低年俸(約200万ドル)や1年契約を提示された場合、その選手はそれを受けるしかないかもしれません。さらに、選手は新たなチームでの役割や立場に不満を感じることもあります。例えば、ある選手が以前のチームではスターターや主力選手だったとしても、新たなチームではベンチや補欠選手になることも考えられます。
チームにとってのデメリット
バイアウトにはチームにとってもデメリットがあります。まず、チームはバイアウトした選手のサラリーキャップに対して一定のペナルティを負うことになります。例えば、あるチームが残り2年間で4000万ドル(約44億円)の契約をしていた選手を2000万ドル(約22億円)でバイアウトした場合、そのチームはその選手のサラリーキャップを2年間で均等に分割して計上することになります。つまり、そのチームはその選手がいなくても、2年間で毎年1000万ドル(約11億円)のサラリーキャップを負担することになります。また、チームはバイアウトした選手が他のチームで活躍することによって、自分たちの競争相手を強化することになるかもしれません。例えば、あるチームが自分たちと同じカンファレンスや地区のライバルチームからバイアウトされた選手を獲得した場合、その選手は自分たちにとって有利な情報や戦略を持っている可能性があります。さらに、その選手は自分たちに対してモチベーションやリベンジ心を持ってプレイするかもしれません。
バイアウトの例と影響
有名なバイアウトの例
NBAでは多くのバイアウトが行われてきましたが、中でも有名なものをいくつか紹介します。
- • 2004年:ラシード・ウォレス ラシード・ウォレスは2004年にポートランド・トレイルブレイザーズからアトランタ・ホークスにトレードされましたが、わずか1試合でホークスからバイアウトされました。その後、デトロイト・ピストンズと契約し、同年のNBAチャンピオンシップで優勝しました。
- • 2012年:ジェレミー・リン ジェレミー・リンは2012年にニューヨーク・ニックスで「リンサニティ」と呼ばれる大ブレイクを果たしましたが、同年のオフにニックスからクオリファイング・オファー(制限付きFAの権利行使)を受けませんでした。その代わりに、ヒューストン・ロケッツから提示された3年間で2500万ドル(約27億円)のオファーシート(制限付きFAへの提示書類)にサインしました。しかし、ロケッツでは期待されたほどの活躍ができず、2014年にロサンゼルス・レイカーズにトレードされました。その後、シャーロット・ホーネッツやブルックリン・ネッツなどを渡り歩きましたが、2019年にネッツからバイアウトされました。その後、トロント・ラプターズと契約し、同年のNBAチャンピオンシップで優勝しました。
- • 2021年:ブレイク・グリフィン ブレイク・グリフィンは2018年にロサンゼルス・クリッパーズからデトロイト・ピストンズにトレードされましたが、怪我や不振に苦しみました。2021年3月にピストンズからバイアウトされた後、ブルックリン・ネッツと契約しました。ネッツではダンクやディフェンスなどで貢献しましたが、NBAファイナル進出は果たせませんでした。
バイアウトがNBAに与える影響
バイアウトはNBAに様々な影響を与えています。一つは、パワーバランスの変化です。バイアウトは主に優勝候補チームやプレーオフ進出圏内のチームが行うことが多くなっています。これは、そうしたチームが自分たちの弱点を補強したり、経験豊富な選手を加えたりすることで、優勝への望みを高めようとするからです。一方で、下位チームや再建中のチームは自分たちの高額年俸選手や不要な選手を放出したり、若手選手やドラフト指名権などを獲得したりすることで、将来への投資を行おうとします。このようにして、バイアウトはNBA全体のパワーバランスを変える可能性があります。
もう一つは、フェアネスやコンペティティブネスの低下です。バイアウトは一部の人々から批判されています。その理由は、バイアウトはNBAのフェアネスやコンペティティブネスを低下させるというものです。例えば、あるチームが高額年俸選手をバイアウトすることで、その選手が他のチームに加わることができます。しかし、その選手はバイアウトされたチームから受け取った金額に加えて、新たなチームからも金額を受け取ることになります。つまり、その選手は二重に報酬を得ることになります。これは、その選手にとっては有利ですが、NBA全体の経済的な均衡を崩すことになります。また、バイアウトされた選手が優勝候補チームに加わることで、そのチームはさらに強くなります。これは、そのチームにとっては有利ですが、NBA全体の競争的な均衡を崩すことになります。さらに、バイアウトされた選手が以前のチームやライバルチームに対してプレイすることで、その選手は不公平な利益や情報を持つことになります。これは、その選手にとっては有利ですが、NBA全体の公平性や正当性を損なうことになります。
まとめ
この記事では、NBAのバイアウトについて徹底解説しました。バイアウトとは、チームと選手が契約を解消する際に、選手が残りの契約金の一部を放棄することで合意することです。バイアウトにはメリットやデメリットがありますが、それらは選手やチームによって異なります。また、バイアウトはNBAに様々な影響を与えていますが、それらはポジティブなものもネガティブなものもあります。バイアウトはNBAのパワーバランスやフェアネスやコンペティブネスを変える可能性があります。
バイアウトはNBAの一部として存在していますが、それをどう評価するかは人それぞれです。ある人はバイアウトを自由や機会や戦略として肯定的に見るかもしれません。別の人はバイアウトを不公平や不正や破壊として否定的に見るかもしれません。どちらにせよ、バイアウトはNBAのファンや関係者にとって無視できない現象です。
よくある質問
• バイアウトされた選手は同じシーズン中に以前のチームと再契約することはできません。
• バイアウトされた選手は同じシーズン中に以前のチームからトレードされた場合、そのトレード先のチームと契約することはできません。
• バイアウトされた選手は同じシーズン中に以前のチームから放出された場合、その放出先のチームと契約することはできません。
• バイアウトされた選手は同じシーズン中に以前のチームから放出されてもらった場合、その放出先のチームと契約することはできません。
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